MLBの日記

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Mr.QS

現地2日。サンディエゴ・パドレスの本拠地ペトコ・パークにコロラド・ロッキーズを迎えたダブルヘッダーの第一試合。

 

現在ナ・リーグ西地区2位。絶対王者ロサンゼルス・ドジャースに大きく離されている。直接対決が12試合残されており、まだ地区制覇の希望は潰えていないが、既定路線ではワイルドカードでのポストシーズン出場だろう。

ボブ・メルビン監督に開幕投手として指名されたエースのダルビッシュ有は、見事期待に応え、抜群の安定感を示し続けている。

登板した19試合のうち、17試合で6イニング以上、10試合で7イニング以上を投げるという圧巻の仕事ぶりだ。

ここまでのベストピッチゲームは、

オールスターブレイク明け、弾みをつけたい後半初戦。

相手が地区首位メッツで敵地シティ・フィールド。投げ合った相手がマックス・シャーザーという高難度の試合で、スプリットを決め球に9奪三振、7回を1失点のみで投げ抜き勝利投手に輝いた。

 

 

立ちはだかるロッキーズは、ボールがよく飛ぶ本拠地クアーズ・フィールドの恩恵を受けているものの、打率メジャー2位の強力打線。同地区最下位のチームとは言え、侮ることなどできない。

 

 

今季20試合目の先発マウンドは、精神力を問われる一戦となった。

 

初回を3者凡退で上手く滑り出すが、2回にランドル・グリチャックに2ランを許して失点。

4回にはブレンダン・ロジャースにもソロ本塁打を許してしまう。

序盤は制球が安定せず、3点をリードされる苦しい展開。この回なおも無死二、三塁の大ピンチを招き、コーチとチームメイトが集まるとその直後、事態は一変する。

ダルビッシュの球は唸りを上げているようだった。この試合のハイライト。衝撃の三者連続空振り三振で切り抜けた。

 

流れを呼び込んだその裏、エースの気迫にパドレス打線は奮起した。

オースティン・ノラの犠牲フライで1点を返すと、トレント・グリシャムの12号2ランで同点。

5回裏には、キム・ハソンのタイムリーで勝ち越しに成功した。

 

 

今季、10試合で100球以上、最大114球を投じているダルビッシュはスタミナも十分。最後の打者に対する107球目、97マイル(156キロ)のツーシームで見逃し三振に斬って取り、雄たけびを上げた。

4回までに84球を消費しながら、6回まで投げきり、6安打3失点とクオリティースタート(6イニング以上を自責点3以下)でまとめ上げた。2017年以来5年ぶり5度目の2桁勝利を達成。

今季20試合目の登板で、クオリティースタートは5試合連続で、なんと16度目。

QS率80%はメジャー2位。1位はチームメイトのジョー・マスグローブで83.3%。

身体はシャープになり、フォームに力みが格段に減った。

変化球を自在に操り、終盤まで投げ切れるスタミナがその証拠だ。

今季ストレートの平均球速は、35歳以上の投手に限ればメジャー1位。

 

メジャーのファーストワンバウンドキャッチは、見るものを魅了する。

 

 

2022夏の移籍市場を最も賑わせたのは、パドレスだった。

ミルウォーキー・ブルワーズから通算125セーブ、今季メジャー最多29セーブの左腕ジョシュ・ヘイダーを4選手との交換で獲得。

買い手側であるはずの地区首位チームが売り手のような振る舞いだ。ブルワーズが誇る現役最高の守護神である。チームの士気にかかわる難しい決断だったはずだ。低予算である田舎のチームには、高年俸がネックになったのかもしれない。弱体化に見える分、どこまでやれるか、今後の注目度は一気に上がった。

 

そして、トレード期限当日の2日、ナショナルズから最大の目玉だったフアン・ソトと、ジョシュ・ベルを2対6のトレードで獲得した。

ナショナルズから打診されたメジャー史上最高額の15年総額4億4000万ドル(590億円)の延長契約を拒否し、移籍を志願した。実は、年で割れば破格ではない。まだ若く、この先も大型長期契約のチャンスはいくらでもある。勝てそうなチームに行きたいと思うことは当然だ。

ポストマイク・トラウト、現役最高の野手になる素養をソトは持っている。共通点は、目の良さだ。好打者に必須の選球眼だが、次元が違う。10代選手の歴代最多記録となった79四球は、破られる想像が出来ないほど飛び抜けた数字だ。

投球を見送る際のルーティーン、ソトシャッフルは最高だ。相手投手に向けられる挑戦的な眼差しには、何としても塁に出ようとする強い意志が見える。

メジャーデビューから23歳シーズン(最低1500打席)まで出塁率.427は、打撃の神様と呼ばれたテッド・ウィリアムズの.481に次ぐ歴代2位。パドレスの放送局BSサンディエゴは報じている。

2019年のワールドシリーズで3本塁打、7打点をマークし、チームを史上初の世界一に導いた。20年は打率.351で首位打者

今季は打率.246、21本塁打、46打点。打率と打点が寂しいような気もするが、断トツトップの91四球を選び、出塁率は4割を超えている。

通算127発の両打ベルも打線に厚みをもたらすはずだ。好調の今季は、打率はキャリアハイの.301、14本塁打、57打点と活躍。

最強の矛と盾を手に入れ、初のワールドシリーズチャンピオンへと駆け上がれるか。期待はパンパンに膨れ上がった。

実るほど頭を垂れる稲穂かな。

大ベテランになったダルビッシュを見ているとそう思う。良い時も悪い時もメディア対応は丁寧で思慮深く、感謝を口にすることが多くなった。

16勝したメジャー1年目、奪三振王にも輝いた2年目のテキサス・レンジャーズ時代の数字は素晴らしいが、長いキャリアの中で、今が最も良い投手に見える。

身体造りに失敗し、怪我を繰り返しながら、これほどまでの復活は飛び抜けたポテンシャルを持っているスーパースターの中でも、ほとんどお目にかかれない。想像を絶するほどの鍛錬と研究があったに違いない。同じ天才アスリートの内助の功もあるだろう。

今月16日には、36歳である。心・技・体が整えられなければ、現役を続けることはできない。ダルビッシュは、スポーツの醍醐味を存分に魅せてくれている。

 

昨季は、後半に失速してしまった。

ここから終盤にかけて、ポストシーズンへと続く道はとんでもなくタフだ。どうか健康でいて欲しい。

 

 

 

 

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