マルコ・ゴンザレス
現地9月26日。
本拠地エンゼル・スタジアムにシアトル・マリナーズを迎えた同地区対決。
エンゼルスとしては今季ホーム最終戦で何より大谷翔平としてもベーブ・ルース以来、103年ぶりとなる「2桁勝利&2桁本塁打」を達成したい。
ホームでは無双状態の大谷は、前回登板も、
スプリットのキレ味が抜群で10奪三振、8回2失点のハイクオリティスタート(7イニング以上を投げ、2自責点以内)の快投。しかし、援護なく勝ちをつけることが出来なかった。
Sunday SHOdown for our final home game 💪
— Los Angeles Angels (@Angels) September 26, 2021
📺 @BallySportWest
📻 @AngelsRadioKLAA #WeBelieve pic.twitter.com/r2CMxazKLx
大谷は、2番・投手で先発出場。
低調な打線で期待が持てるのは、自身初となったオールスターゲーム選出のジャレッド・ウォルシュ。
今季のハイライトは現地6月30日、起死回生の同点グランドスラムだ。
アロルディス・チャップマンの満塁本塁打の被弾はキャリア初。5回にもソロ弾。
二刀流の経験があり、打者に専念し、キャリア初めてシーズンをほぼフル稼働し、今季打撃が開花した。
大谷の今季ワースト(0回 2/3、7失点)の試合で、2度の雨天中断、現地時間で午前1時を回り、5時間57分を要した大荒れの試合だった。
もう一人の注目は、今季デビューのエンゼルスno.1プロスペクト、23歳ブランドン・マーシュ。不調のデビット・フレッチャーに代わって、終盤になってからリードオフマンとして機能している。たくましいヒゲに193cmのサイズとは裏腹に、シュアなバッティングで、長打力はまだ発展途上。選球眼がよく、広角に打てて器用なタイプ。バルクアップはしすぎずに、鬼ヒゲの先輩チャーリー・ブラックモンのような率を残せる打者になってほしい。
ベンチでは大谷と良くコミュニケーションを取っている。おそらくアドバイスをもらっているのだろう。見た目が派手だが、真面目そうに見える。ドラ1で元no.1プロスペクトのジョー・アデルを期待値で追い抜かした一端が見える。
対するマリナーズは、ワイルドカードゲームに進出する可能性を残している。同地区の2位を争うオークランド・アスレチックスに、後半戦の12連勝が大きかった。
Massive matinee matchup. #SeaUsRise pic.twitter.com/kuCa5aVP8T
— Seattle Mariners (@Mariners) September 26, 2021
打率はリーグ最下位。防御率は真ん中程度。
接戦をモノにしてきた印象が強い今季のマリナーズは勝負強い。少ないチャンス、ここ一番での打線の迫力は凄まじい。
キャリア初のシーズンフル稼働でブレイクした1番J.P.クロフォード、チーム最高打率.291のタイ・フランス、チーム最多本塁打で最高長打率ミッチ・ハニガー。顕著な例は、33歳のフランチャイズ・プレーヤーであるカイル・シーガーだ。打率はたったの.216だが、マリナーズ一筋メジャー11年目にしていずれもキャリアハイの35本塁打、100打点をマークしている。
短縮シーズンの昨季。打率.262、11本塁打、28打点をマークしてア・リーグ新人王に輝いたカイル・ルイスが序盤に怪我で離脱していなければ、もっと善戦していたに違いない。
先発投手は、三年連続開幕投手を務めるエース、マルコ・ゴンザレス。
シーズン序盤は苦しんだ。1勝5敗で、防御率5.91。しかし、オールスターブレイクが明けた後半戦に入るとリズムと自信を取り戻し、8連勝。
レンジャース相手には、本塁打を含む2安打1失点の完投を達成している。
逆に予想外の急ブレーキだったのが、6勝3敗、防御率3.18、93奪三振と優秀な成績で、オールスターに選出された菊池雄星。後半戦に入ると、63回2/3しか投げられず、1勝6敗、防御率6.22。メジャーにフィットしてきて、フォームも安定した。二桁勝利は固いように見えた。早く追い込んで、勝負出来ていた前半とは真逆の展開。カウントを悪くし、ストライクを取りに行けば痛打され、コースを狙いすぎて四球と苦しんだ。
メンタルコントロールか、ワクチンの副作用か。数多のメジャーリーガー左腕の中でも、一級品の球を投げる菊池。同じ年で、速球がたったの90マイル(144.84キロ)前後で打ち取るゴンザレスがどう写っているのだろう。実力を発揮するのは簡単なことではないが、成功体験を積み重ね、前進しているはず。来季こそはと期待したい。
ともにシーズン二桁勝利をかけた負けられない試合は、気迫のこもった投手戦となった。
試合が動いたのは2回。一死からバッテリーを組むカート・スズキが、レフトスタンドに放り込んだ。
守備寄りの名捕手スズキは打力での貢献は乏しいが、人格者であり頭がいい。来季残れるかは微妙だが、若手に多くの学びを与えた功績は少なくない。メジャーで38歳まで現役を続けること自体が偉業だ。
投手大谷は、この日も爽やかに相手打者をねじ伏せる。2、3、4回と続けて三者凡退に抑え、3塁を踏ませない安定感をみせた。
左打者からは逃げ、右打者には外から入ってくるバックドアとして機能したスライダーのキレ味は抜群。カットボールを軸に速球を効果的に織り交ぜながら、スプリッターも修正。つけ入るスキを与えなかった。
6回を投げ終えて球数は98。何としても勝ちたい大谷は1点リードの7回も続投したが1死後、カウント1ー1からの105球目。スライダーが甘く入ってしまった。
今季メジャーデビューを果たした22歳。打率1割台の伏兵7番ジャレッド・ケレニックに甘く入った変化球を捉えられ痛恨の同点ソロ本塁打を許した。
Shohei Ohtani, 99mph Fastball, 83mph Slider and 93mph Splitter, Overlay w/ Tails. pic.twitter.com/IFBxTkmjZn
— Rob Friedman (@PitchingNinja) September 27, 2021
7回112球を投げ、5安打10奪三振1失点の好投を見せたが、打線の援護がなく2桁勝利をマークすることができなかった。
打者としては3打数1安打。
スズキの一発以外は、マーシュと大谷の単打2本のみ。
技巧派ゴンザレスの真骨頂だった。
これぞ投球術。内外、高低に散らし、コーナーに投げ切った。低く制球されたチェンジアップで緩急をつけ、速くないストレートにもミートさせなかった。
7回を投げ抜き、直後8回表。味方打線がエンゼルスリリーフ陣を攻略し、10勝目の勝ち星を掴み取った。
大谷は、今シーズン本拠地で13試合に先発し6勝0敗、防御率1.95。
メジャーリーグの長い歴史の中で、本拠地で13試合以上に先発登板して無敗でかつ、防御率2.00以内の数字を残したのは、
ダラス・カイケル(2015年)、ホセ・ヘルナンデス(2013年)、ケニー・ロジャース(1998年)、オーレル・ハーシュハイザー(1985年)、テックス・ヒューソン(1944年)の5人しか達成していない偉業。6人目の達成となった。
Shohei Ohtani's 1.95 ERA at home is the lowest by an @Angels pitcher since Jered Weaver in 2011 (min. 50 IP). pic.twitter.com/T4HeauxBUN
— MLB Stats (@MLBStats) September 26, 2021
大谷の本拠地での防御率1.95は、ジャレッド・ウィーバー(2011年)以来、エンゼルスの先発投手で最も素晴らしい数字だという。
2桁勝利は達成できなかったが、今季投手として23試合に先発し、130回1/3を投げ、9勝2敗、防御率3.18、156奪三振を達成した。
MVPは大谷一択。45本塁打を放って150三振を奪った選手は過去にいないのだから。
お読みいただきありがとうございます。