2020サイ・ヤングレース ~ナ・リーグ~
「家族や仲間のことを想えば、事態も考えた。今シーズンは、ファンのために投げる」そう語ったダルビッシュ有に思わぬチャンスが訪れている。
新型コロナによる短縮シーズン、60試合が終了。
8勝3敗、防御率2.01。
初戦は黒星が付いたものの、2戦目のパイレーツ戦で、今季初勝利を挙げると勢いは止まらなかった。
8月の全6登板を、全勝し、9月5日のカージナルス戦まで、7連勝。
しかも、QS(クオリティ・スタート=先発投手が6イニング以上を投げ、かつ3自責点以内)が4つ、HQS (ハイ・クオリティ・スタート=7イニング以上を投げ、かつ2自責点以内で抑える)が6つと圧巻のシーズンだった。
5回持たなかったのは、初戦のみ。
トミージョン手術、急激な筋肥大で、制球力を失い、怪我も増えた。ダルビッシュは、もう厳しいと正直思っていた。しかし、昨季後半から復調、好捕手ビクター・カラティーニとの息が合い始めると、抜群の器用さで、変化球を増やし、制球力も改善していった。山本3兄弟の中でも天才と言われた聖子夫人の内助の功もあったのだろう。
サイ・ヤング賞に手が届くかもしれないところまで到達してしまった。
今季も理不尽な剛速球を投げるジェイコブ・デグロムだろうと思っていたが、終盤でつまづいた。奪三振104、奪三振率(奪三振数×9÷投球回)13.76は、堂々のナ・リーグ1位だが、他の数字が良くなかった。
ベストピッチは、現地8/27のマイアミ・マーリンズ戦。7回を1失点で投げ切り、キャリアハイの14奪三振。これで勝ちがつかないのが、デグロム。
援護点が少ないのは、もちろんだが、リードしていてもブルペン陣が踏ん張れない。
理由がある。MLBno.1の速球に、同じ軌道から繰り出されるスライダー、チェンジアップ、カーブ全てが最高級である彼の後に続く投手は、劣化して見える。目が慣れた打者には、何とかなりそうな球ばかりに見える。ミート率は上がるのだ。難敵が降りた後にチャンスあり、は共通認識になっている。
というわけで、トレバー・バウアーとの一騎打ちとなりそうだ。
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) September 28, 2020
個人的には、贔屓目なしに、ダルビッシュに1位票。
ベストピッチは、最終登板。
最多勝利タイトルに加え、投球回、QS数10回(1位)、FIP、FangraphsのWAR(1位)、制球力を表すK/BBでもバウアーを上回る。どちらが優秀な先発投手と考えれば、当然そうなる。
※FIP(Fielding Independent Pitching)は、守備の関与しない与四球・奪三振・被本塁打3つの項目から、守備から独立した防御率を評価する指標。
※WAR(Wins Above Replacement)は、セイバーメトリクスによる打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標。
※K/BB=奪三振÷与四球
しかし、全米野球記者協会所属の記者60人による投票で決まるサイ・ヤング賞は、その個々人の印象や、好みが加味され、数字だけで判断されるわけではないから、ややこしい。。
セイバーメトリクス導入以降、勝利数は重視されなくなっている。味方打線の援護力に大きく影響され、投手自身の純粋な実力ではないからだ。2018年(10勝8敗)、2019年(11勝9敗)だったメッツのデグロムが、連続でサイ・ヤング賞を獲得していることからもよく分かる。
相手打者をねじ伏せた印象ならば、バウアーになる。
バウアー 100奪三振
バウアー 防御率1.73 1位
WHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)
バウアー 0.792 1位
ダルビッシュ 0.961
※WHIP = (与四球 + 被安打) ÷ 投球回
ダブルヘッダーによる7回制だったが、完封が2回。
直接対決でも、バウアーが勝った。
7回 2/3を112球の熱投で、無失点、10奪三振。ベストピッチだった。
どちらがとってもおかしくない。近年の傾向から考えれば、バウアーがやや有利か。。
日本人初の快挙達成を祈るばかりである。
両リーグでも、三冠。
勝利数 8
防御率 1.63
奪三振 122
異例のシーズン、バットが湿りっぱなしのまま終わった打者が多いこともあったが、奪三振率14.20はMLB史上第1位。
ベストピッチ。まさに精密機械、現代のマダックスだ。
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